光は、全て消えた。

 モネグロスの姿も、言葉も。

 彼の捧げた愛もなにもかも、もう消滅してしまった。

 アグアさんは、身じろぎもせずに立ち尽くしている。

 爛れてしまった顔は、呆然と、混乱と、驚愕と、衝撃に染まっていた。

 しばらくの間、ただ立ち尽くしていたその身は、ドサリとその場に座り込んでしまう。

 汚れたヘドロが土に跳ねた。

「……」

 あらゆる感情を混ぜ込んだような彼女の目から、ようやく涙が流れた。

 ドロリと粘着した黒い涙が顔を汚す。

「……」

 頬を汚す涙が、流れ落ちずに盛り上がる。

 アグアさんはヘドロにまみれた手を頬に当てようとして、ふと、止めた。

 そしてその手を、ある物に向かって伸ばす。


 モネグロスの遺した砂へと。


 アグアさんの震える手が、自分が蹴散らしたモネグロスの砂へと伸びる。

 まるであの時、モネグロスが自分へ伸ばした手のように。

 そして彼女の手が砂を掴み、砂はヘドロと混じり合う。

「う……」

 彼女の口から、怨嗟以外の声が絞り出された。