銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「我が主、大いなる始祖の神の復活を叶えるための代償たるや、計り知れぬ。世界を支える三種の生命、それも特別な者の命が必要なのだ」

 世界を支える三種。

 神、精霊、人間。

 そして、それぞれの中で最も貴重で特別な命。

 その三つの命が石柱に捧げられた時……

「始祖の神が復活する」

 定められた歴史の教科書を読むような声で、それが当然と言わんばかりに番人が語る。

「神の中で最も純粋な心と愛を持ち得た神、モネグロス。この命は代償に相応しい」

 至極満足げな番人の顔を、あたしは穴が開くほど凝視した。

 じゃあ、なに? モネグロスは生贄にされたの?

 もしかして、最初から狙われていた?

 世界を汚染する為に、神の命を捧げる為に、モネグロスとアグアさんはその存在に目を付けられていた。

 まさに格好の餌食として。

 ふたりを引き裂き、離れ離れにして、疑心を植えつけて。

 アグアさんを餌にして、モネグロスをおびき寄せて。

 そしてふたりの愛を徹底的に利用して、メチャクチャに踏みにじって……

 最期に、止めを刺させた。

 始祖の神復活という、自分の欲望を叶える為の生贄として。

 ……。

 なんて……酷い事を……。

 なんて、非道な真似を……!

「番人! あんたは!!」

 何も知らぬアグアさんは笑い続けていた。

 モネグロスの遺した砂を、汚らわしい物でも扱うように蹴散らしながら笑っていた。

 その哀れな姿を見て、あたしの中に堪えきれない感情が膨れ上がる。