銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「モネグロス……アグア……」

 その声を聞き、あたしは嗚咽しながら振り向いた。

 ジンとイフリートとノームが、地面にへたり込んでいる。

 みんな両目を見開き、唖然として、目の前の現実を眺めていた。

「嘘だろぉ……?」

 力の無い、呟くようなジンの声。

 ジンにとってこれは最も受け入れ難い現実。

 盟友モネグロスが、盟友アグアによって殺された。

 彼と固い絆で結ばれていたふたりが。

 完璧な一対と褒め称え、砂漠の誇りと信じて疑わなかったふたりが、脆くも崩れ去ってしまった。

「そ、んな……」

 砂漠の神殿は崩壊し、眷属達も消滅した。

 神の船も、もはや無い。

 命の源である水の精霊アグアは、完全に汚染されて堕ち果てた。

 神、モネグロスは……死んだ。

「そんな……そんな……」

「ジン……」

 あたしはジンの隣に座り込み、その肩を抱きしめる。

 完全に表情を失ってしまったジンは、まるで別人のようだった。

 こんな抜け殻のようなジンは見たことが無い。

 モネグロスも、アグアさんも、ジンも、取り返しのつかない大切なものを喪失してしまった。

 もう、どこにも無い。無いんだわ。

 失ってしまったんだわ……。

 この胸を押し潰されるような深い喪失感に、あたしには泣く事しかできない。

 この悲しみをどうすればいいの?

 ジンを抱きしめて、声を上げて泣く以外にどうすればいい!?

 いったい何を、どうすればいいというの!?