銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

―― ゴポリ……。

 モネグロスのすぐ横に黒い染みが突然浮かびあがり、染みの表面がヌラヌラと揺らめいている。

 あれは、黒い水溜り?

―― ゴポリ……ヌプリ……。

 水溜りは広がり、そしてみるみると盛り上がる。

 粘度のある真っ黒な塊りが、ごぷごぷと音を立てて、なにかの形に作られていく。

 それを唖然と見守るあたしの鼻に、ツンと悪臭が届いた。

 このドブの底のような臭い。形容し難い不気味な色。

 そして、人型の形状は……。

 あ……あ……

「アグアさん!?」

 そこに突如として現れたのは、紛れも無くアグアさんだった。

 悪意に堕ち、道を踏み外した成れの果て。

 全身を悪臭とヘドロで覆われ、爛れて腐り落ちた醜い顔が、消えかけたモネグロスを見下ろしている。

「……」

 モネグロスが言葉もなくアグアさんを見上げている光景を、あたしは身動きも出来ずにただ見ていた。

 会わせてあげたいと、思っていた。

 ふたりを会わせてあげたいと、本当に、心から願っていた。

 …………。

 会って……しまった。

 こんな、こんな状況で。

 いったい、どうすれば……。