銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 ……斬る!

 そう確信した瞬間、背中を向けたままの番人の姿が、忽然と消滅した。

 刃は虚しく空を切り、地面に叩きつけられる。

 バランスを崩したヴァニスが転倒したのを見て、あたしは地団太踏んで悔しがった。

 あぁ、あと少しだったのに! なんてしぶといのよ!

 しかも自分の強さを見せ付けるような、憎ったらしい真似までしてくれて!

 長生きしてるくせして、味わいも品格もあったもんじゃない! やってる事が生意気盛りのガキそっくり!

 しかも逃げるなんて卑怯よ! 時間稼ぎのつもりなの!?

「隠れてないで出てきなさいよ! 番人!」

 その時、モネグロスの全身が揺らめくようにボウッと光った。

 まるで蛍の光のように彼の体が点滅するたび、どんどん透けていってしまう。

 ……あれは、水の精霊が消滅した時と同じ光! とうとうその時が来てしまったの!?

 ああ! モネグロスが消滅してしまう!!

 あたしはジンの所へ駆け寄り、無我夢中でその体を揺さぶった。

「ジン! ジン! モネグロスが!」

 ボロボロに傷付いたジンは完全に脱力し、意識を喪失してしまっている。

 どんなに強く揺すっても、閉じられた両目は開かれる気配がまったく無い。

「ジン! 気を失ってる場合じゃないのよ! モネグロスがついに消滅してしまうのよ!」

 あたしは力任せに彼の背中を殴りつけ、叫び続けた。