走るヴァニスのスピードがドンッとアップした。

 あたしも全力でジン達に向かって駆ける。

「やめて! ジン達に近寄らないで――!」

 番人の片手がジン達に向かって動き始めるのを見て、あたしは血相を変えた。

 間に合わない! いやあぁ!

「……?」

 番人の顔に訝しげな表情が浮かび、突然手の動きを止めた。

 ジン達に向けられていた番人の腕全体が、細かい粉塵のようなものが包み込まれている。

 あれは何? キラキラ輝いていて、あれはまるで……

「砂!?」

 あたしの視線は、番人からモネグロスへ移った。

 石柱の間に横たわったモネグロスが、懸命に右手を伸ばし動かしている。

「モネグロス! 意識が戻ったのね!?」

 まるで楽器でも奏でるようにモネグロスの指先が繊細に動くと、番人の腕からプスプスと細い煙が立ち昇った。

 息も絶え絶えのモネグロスが、力を振り絞ってジン達を守ろうとしてくれている。

「……」

 煙のあがる自分の腕を無表情に眺めていた番人は、おもむろにモネグロスの方へ向き直る。

 そしてその腕を高々と頭上へ掲げて、ブンッ!と勢い良く下へ振り下ろした。

 途端にモネグロスの砂は、力を失ったようにザァッと地面に落ちてしまう。

「無意味である」

 番人は無傷な自分の腕を見せ付けるように再び頭上に掲げて、感情のない声でそう言い放った。

 モネグロスは無念の呻き声を上げて、力尽きたようにバタリと突っ伏してしまう。

 ……と同時に、番人の体が黒い影に覆われた。

 いつの間にか剣を両手に掲げたヴァニスが、一足飛びに番人の背後に近寄って飛び上がっていた。

 気合諸共、一刀両断。渾身の力で剣を振り下ろす。

 刃に刻まれた王家の紋章が光を放った。