この悲惨な現状の中で、番人だけは顔色ひとつ変えず、子憎たらしいほど悠々と構えている。

 さすが破壊の神の眷属だ。実はこいつこそ怪物なんじゃないだろうか?

 強烈な風の威力に、地面の土が抉れて吹き飛ばされ始め、まるで砲丸のような土の塊りや岩がジンとイフリートに襲い掛かる。

 指一本動かせない状態で、彼らは一切防御が叶わない。

 怒涛の飛礫が、メチャクチャに彼らの全身を痛めつけた。

「ジンー! イフリートー!」

 あたしは手の中の草を千切れるほど握り締め、泣きながらその光景を見ていた。

 なにもできないなんて! 大事なものが傷つけられるのを、見ている事しかできないなんて!

「雫……! 無事か!?」

 いつの間にかヴァニスが、あたしの隣までにじり寄ってきていた。

 猛烈な風の中、必死になってここまで這いつくばってきたんだろう。

「あたしの無事よりも、ジンが! イフリートが!」

―― ビュルルルルッ!!

 突如、ジン達の周辺の地面から、一斉に蔓が伸び出した。

 膨大な数の蔓同士が素早く絡み合い、巨大な壁を作って、飛礫の攻撃からジン達の身を守ってくれる。

「……ノーム!?」

 イフリートの服の肩口あたりがモゾモゾと動いて、見慣れた緑色の髪が少しだけ覗いていた。

 ノーム、無事だったのね!? あぁ良かった! これでなんとか助か……

「……!?」

 突然、ジン達の遥か頭上に、燃え盛る巨大な炎の球が出現した。

 イフリートの炎の球が赤子に見えるほどの巨大な球が、この猛烈な風をものともせず、轟々と燃え盛っている。