双頭の馬は、あたしから少し離れた場所で地面に倒れ、ピクピクと僅かに蠢いている。

 何とか立ち上がろうとして力を振り絞り、でも虚しくその場に崩れ落ち……

 やがて、動かなくなってしまった……。

 一番遠くに飛ばされたヴァニスが、必死に立ち上がろうともがく姿が見える。

 遠目でもはっきりと分かるほどに苦悶しているその様子は、彼の受けたダメージの大きさを如実に物語っていた。

 そのあたし達の頭上を、恐ろしいまでの強力な風が轟々と吹き渡っている。

 この風に襲われて吹き飛ばされたんだ。風というより、まるで見えない分厚い巨大な壁に激突した感触だった。

 髪の毛も服も、バタバタと音を立てて風に翻る。

 猛烈に叩き付けてくる風圧のせいで、空気が吸えない!

 風の轟音のせいで耳が痛い! 何も、何も聞こえない!

 それでも何とか動こうとした途端に、体がフワリと浮きあがってしまい、慌てて草にしがみ付いた。

 動いた拍子に、また膝関節と全身に痛みが走って、顔を顰めて呻いてしまう。

 ……ジン、みんな……どこ?

 ジンもイフリートも地面に倒れ、強烈な風にその身をさらされていた。

 どうやらあたし達の数倍の威力の風に襲われているらしく、まるで縫い付けられているように地面に張り付いている。

 あまりにも強烈な風に押さえつけられて、指一本動かす事が出来ないんだわ!

 いったいどれほどの風圧を受けているの!?

「……ジ……ン……!」