近寄ろうとする兵士達を蹴散らすように、馬は疾走する。

 城の敷地を抜けるまで、また何度か集団に襲われかけたけれど、ジンとイフリートがあたし達を守ってくれた。

 風に乗った鋭い炎が、強烈な火炎放射のように兵士達の足元を焼き、炎で出来た柵のように一直線に燃え上がる。

 揺れ踊る真っ赤な炎に恐れをなして、兵士達は近づけない。

 馬は炎を恐れる様子も無く悠々と駆け抜け、城下町へ差し掛かる。

 城下町は騒動と混乱を極め、いたる所で争いが起きていた。

 建物は破壊され、あちこちで乱闘が起き、火が上がり煙が暗い空に立ち昇る。

「寄こせ! これは俺の物だ!」

「いいや俺のだ! 手を離せ!」

 略奪も起こっているらしく、怪我をして血まみれの人間達がたくさん路上に倒れていた。

 ヴァニスが馬を走らせながら、悲壮極まる表情で町を見回す。

 あたしはこの惨状を見て心底嘆き、そして心配した。

 やはりこんな事になってしまったのね。女性や子ども、お年寄り達は大丈夫かしら。どこかに非難しているといいけれど。

 あぁ、あの女の子達はどうしているだろう!

 ロッテンマイヤーさんなら、城下の混乱にも手配を回してくれるだろうけど、今は城の人達の救助で手一杯だろう。

 それまでの間に死傷者がどれだけ増えてしまうだろうか。

 たまらぬ思いでいるあたしの頬に一陣の強い風が吹く。複数の風鳴りが聞こえて、ヴァニスが突然に馬を止めた。

 馬はいななき、首を振って何とか立ち止まる。

 う、うわ! あんまり首振らないで!