それからあたし達は、休むことなくひたすら懸命に走り続けた。

 動悸が早まり、胸が大きく上下する。汗が額からボタボタ伝い落ちた。

「はぁ! はぁ!」

「雫……」

「な、なに? ジン?」

「お前が一番遅い! もうちょっと早く走れよ!」

「うるさいわね! これでも最大限に努力してるわよ!」

 んもう! 余計な酸素消費させないでよ! さ、酸欠になるじゃないの!

 人間はね、トップスピード維持したまま長時間は走り続けられないの!

「しずくさん、大丈夫ですか?」

 イフリートの肩に乗ったノームが心配そうに聞いてきた。

「だ、だ、大丈夫、よっ」

 息を切らして、必死に答えるあたし。

 イフリートもジンも、人間のあたし達に合わせて走っているから、かなりもどかしいんだろう。

 ジンなんて露骨にイラついてるしっ。

 ヴァニスはあたしに比べると遥かに余裕が見られる。あぁ、やっぱりあたしが一番足引っ張りだわ。

 小学生の頃から、短距離も中距離も長距離も苦手で、もっぱら障害物競走専門だった。

 社会人になってからは、完全に走る機会なんて無くなったし。こんなに走ったの何年振り?

 あぁ、心臓が、破裂、しそう!

 ぐ、苦しい! あ、足、足が止まる……!

 そんな風に息も絶え絶えに走っていると、『わああっ!』と喧騒が聞こえてきた。

 なに!? ああもう、またヴァニスを狙う兵士達だわ!

 いい加減にしてよ! こっちはそれどころじゃないんだから!

 命に関わる問題なのよ! いろんな意味で!

 半分意識が飛んでる状態で兵士達を睨みつけていると、彼らの間にざわめきが走った。

 何事かと思っているうちに、ざわめきは悲鳴に変わる。