偉そうな事言ってるけどね、今の自分達の姿が分かってる!?

 まるっきり、巨大モグラ叩きよモグラ叩き! みっともないの極致だわ!

 いくら汚染されて理性を失くしてるからって、情けなさ過ぎよ!

「お望みどおり、端から順々にハンマーで地面にめり込ましてやろうか!?」

「雫、余は気にせぬ。急ぐぞ」

「だってこいつら、いっぺん死ぬほど痛い思いしないと分かんないわよ!」

 んなぁーにが、『精霊ごとき』よ! さっきはその精霊に、無様に命乞いしてたくせに!

 命に別状無いと分かった途端にこれだもの!

 正々堂々!? ヘソで茶が沸くわ! ロッテンマイヤーさんの爪の垢でも煎じて飲んだら!?

「よいのだ。余は本当に何とも思わぬ。精霊と手を組むことを恥とは思わぬ」

「ヴァニス……」

「感謝もしているし、誇りにも思う。だからよいのだ」

「……」

 えぇ、そうね。そうよね。

 ヴァニスも分かってる。ジンもイフリートもノームも分かってる。

 だから、今はそれでいいのよね。

「行こう!」

 再び走り出したあたし達の背中に、口汚い兵士達の罵声が浴びせられた。

 ジンがあたしの横を走りながら、ピュイッと軽く口笛を吹くと、遥か頭上の木々の葉がザワザワと蠢き出した。

 そして右手で手刀を切ったと思うと、木々の葉が枝から離れて風に踊るように兵士達に向かった。

「うわあ!?」「な、なんだ!?」「ひいぃ!?」

 目にも止まらぬ早業で、葉が切れ味鋭い小刀のように兵士の頭上を舞う。

 あっという間に全員、髪の毛一本残さず刈り取られてしまった。

 ……うわ、つるっぱげ。

「ま、これで頭も冷やしやすくなるだろ」

 しれ~っと無表情で言うジン。

 呆気にとられていたヴァニスが、その表情を見ながら愉快そうに笑った。