銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 でも、あたしの気持ちはすでにもう決まっている。

 なのにヴァニスに気を使って、ここでジンの手を振り払う事は、何かが違う気がした。

 ジンもヴァニスもそんな事は求めていない。そんな気がした。

 ヴァニスは素晴らしい人物だと思う。

 間違いなく、男性としてもひとりの人間としても、魅力に溢れている。

 あたしはもしかしたら、無意識にヴァニスに惹かれていたのかもしれない。それほど彼は素敵な人だ。

 それでも……それでもあたしは、やはりジンを選ぶ。

 出会いは最悪だった。

 あたしの事を半人間と呼んで、見下して。

 おまけに精霊と人間の越え難い種族の壁に、さんざん傷付いて泣きもした。

 城の中庭での、あの伝わらないもどかしさと、胸掻き毟られる苦しみは今でも覚えている。

 もう、あたし達はダメだと思った。

 実際、今でも思ってる。あたし達はきっと、結ばれる事は無いだろうと。

 でも。

 でも。

 でも、でも、でも。

 それでも、どうしても愛してしまう。

 この気持ちを自分でも止めることはできない。

 愛するという事の不可思議さ。

 その複雑さ、果ての無い重さ、逃れられない深淵を、ジンに出会ったことによって初めてあたしは思い知る。

 そして誰が何と言おうと、何があろうと、例え結ばれなくても……

 あたしがジンを愛する気持ちは、変えられない事も思い知ったんだ……。