銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「よし! それじゃ先を急ぐぞ!」

「そうね! みんな急ぎましょう!」

 声を掛け合うジンとあたしを、ヴァニスがじっと見つめている。

 何とも表現し難いその視線を辿ると、ヴァニスは、あたしとジンのしっかり繋がれた手を見つめていた。

「……」

 手に、ヴァニスの視線が突き刺さる。

 ヴァニスのあたしへの気持ちを知っているだけに、変な罪悪感みたいなものが込み上げてくる。

 どうしても気が引けて、あたしはそっと手を離そうとした。

 途端にジンが、さらに力を込めてあたしの手を握った。

 まるで、『絶対に離さない』とでも言いたげに……。

 銀の瞳と黒い瞳が、無言で交差する。

 互いの瞳は、それぞれの様々な思いを物語っている。

 例えようも無いほどの真剣な強い眼差しは、無言のままで、語り尽くせぬほどの言葉と感情を交わしているように見えた。

 あたしは俯き、やはり無言でジンの手を強く握り返した。

 ヴァニスの、目の前で。

 罪悪感がジリジリと胸をさいなむ。

 あたしは今、ヴァニスに対して辛い仕打ちをしている。

 それが苦しいし、申し訳ないと思う。