銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「うわあっ!?」「ぎゃあ!?」

 兵士達が次々と悲鳴を上げた。

 見ると、兵士達の体が、足元から地面にヌプヌプと吸い込まれていく。

 暴れて抜け出そうとすると余計に体が沈み込んで、全員みるみるうちに腰の辺りまで沈んでしまった。

 これって、底なし沼? あたしの水の力を利用してノームの土の力を応用したのね!?

 ふたりの連携技だわ! ノームやるじゃないの! さすがあたしの親友ね!

「うわあぁ! た、助けてくれ!」

「頼む! 死にたくない!」

「だいじょうぶですよ。もうそれ以上は沈みませんから」

 命乞いをする兵士達に、ノームは穏やかに話しかける。

「ただ、しばらくの間はそのままです。でも時間がたてば抜け出せますから」

 ノームの言った通り、全員の体の沈みはピタリと止まった。

 腰から上だけが地面から突き出た格好で、みんな情け無い顔をしている。

 ノームが、ヴァニスを見上げながら微笑んだ。

「本心は、この人間達を傷つけたくなかったのでしょう?」

「……」

「さしでがましい事して、ごめんなさい。でもやっぱり……」

「感謝する」

「……え?」

 ヴァニスはノームの前に膝をついた。そして深々と頭を下げる。

「感謝する、土の精霊。本当にありがとう」

「ヴァニス王……」

 ノームは目をパチパチさせて面食らっている。

 そして、頭を上げたヴァニスに対して、あの花のほころぶ様な初々しい笑顔を見せた。