銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「王は怪我をして動けない! 恐れる事はないぞ! 討ち取れ!」

「あんた達! 王を守る為の兵士でしょ!? 欲に目が眩んで裏切るの!?」

「最初に討ち取った者には、約束の二倍、いや三倍の報酬を払うぞ!」

「タヌキのくせして王位なんか狙ってるんじゃないわよ!」

 がなりたてるあたしの叫びも虚しく、兵士達は剣を手に取りこちらに向き直った。

 目ばかりがギラギラして、まるきり聞く耳もたない。

 あぁ、だめだわ。みんな汚染されてしまっている。

 なんて愚かなの!? 王になったって、世界は滅びようとしているのに!

 財産を手に入れたって、みんな死んでしまうのに!

 今はこんな事してる場合じゃないっていうのに!

 うおぉぉ!と、勇ましい声を張り上げて兵士達が再び襲い掛かってきた。

 ジンは焦り切った表情で、ヴァニスと兵士達を交互に見ながら懸命に治癒を続けている。

 まだ手が離せないんだわ!

 あたしはノームを鷲掴み、胸元に突っ込んで、両手で服の上からガードして体を丸くする。

 兵士達の乱雑な足音と息遣いを、すぐそこに感じた。

 ……もう、だめだ! やられる――!!

―― ボオオォォ!!

 頬が焼けるような熱を感じて、閉じた目蓋の裏側が明るさを感じる。

 恐る恐る片目を開けてみると、なんと兵士達が炎を身にまとい、悲鳴を上げてもがき苦しんでいた。

 その向こうには、見覚えのある影が……

「あぁ! イフリート――!!」

 胸元から顔を出したノームが喜びの声を上げた。