銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 兵士達はノロノロと起き上がり、床に飛ばされた剣を拾い上げ始める。

「ま、待って! 誤解よ!」

 あたしは兵士達に向かって大声で叫んだ。

 きっとみんな勘違いしてるんだわ。あたし達がヴァニスを襲っていると思っているのよ。

「違うのよ! 聞いて! あたし達は……」

「皆、怯むな! ヴァニス王を討ち取れ!!」

「……!?」

 なんですって!? あたし達じゃなくて、ヴァニスを討ち取る!?

 耳を疑うような言葉は、少し離れた場所から聞こえてきた。

 ちょびンがガレキの陰に隠れながら、裏返った声を張り上げている。

「王を討ち取った者には、報酬は望みのままだ!」

「な、なに言ってんのよちょびン!」

 なに混乱してんの!? しっかりしなさいよ! 頭大丈夫!?

「あんた、何を考えてんのよ!?」

「お、王が死ねば、私が最高権力者だ! ついに私が頂点に立つ時が来たのだ!」

「な……!?」

「この国を、人間を私が支配するのだ! この私が!」

 ヒヒヒ……と、いじましい声を上げてちょびンが笑う。

 あたしは大きく口を開けて絶句した。

 こ……こ……

 この、バカちょびンが!!

 元々信用ならないタヌキオヤジだと思ってたけど、汚染されたせいで、タヌキ具合に磨きがかかりやがったわね!?

 もう完全に本性丸出し! 理性を失くした野生のタヌキだわ!