銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 その手が番人に届く直前……

―― ドオォンッ!!

 音が、いいや、空間が鳴った。

 それと同時に、ヴァニスの体が弓なりに反ってビクンと硬直する。

 彼の体はそのまま、まるで人形のように指一本動かなくなった。

「ヴァ、ヴァニス!? どうしたの!?」

「あ……が……」

 声も出せないらしい。驚愕のまま、目で番人に訴えている。

『貴様、いったい何をした?』と。

 すうぅぅ……と、ヴァニスの体が見えない何かに吊り上げられたように、宙に浮き上がった。

 身動きできない表情に焦燥が浮かぶ。

「やめろ番人! そいつを放せ!」

 鋭い風の音が聞こえた。

 番人を睨みつけているジンの髪と服が、風に膨らむ。

 周囲に発生した風が、あたしの髪まで逆立てるほどの勢いで番人に向かって襲い掛かった。

―― ゴオオオォォォ!!

 間髪おかずに、恐ろしい突風が返って来た。

 ジンの風の攻撃よりも何倍も強烈な風が吹き、あたし達に襲い掛かる。

 あまりの風圧に、あたしやノームはもちろん、ジンまでも耐え切れずに吹き飛ばされて、ガレキに思い切り叩きつけられる。

 歯を食いしばり、全身の痛みに耐えて、なんとか目を開いたあたしは目の前の光景に驚愕した。

 宙に浮いたヴァニスの全身から……

 あの真っ黒な煙が、天に向かって轟々と一直線に吸い上げられている!?