銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 番人。おそらくはその名の通り、始祖の神のいない世界を、あるがままに見守る為の存在だったんだろう。

 何の干渉もせずに、遠く離れた場所から。

 彼は世界創造の時より、ただひとり、真実を知る者として生き永らえた。

 それはあまりに……あまりにも永すぎたんだ。

 伸びきった髪は真っ白に染まり。

 枯れ木のように細っていく手足。

 刻まれる無数の傷跡のような深いシワ。

 誰ひとり、何ひとつ、関わりも持たずに老いていく。

 ひとり……

 ひとり……

 たったひとりで。

 その、想いすら歪むほどの、永劫の刻の孤独。

 耐え切れずに、番人は本来の目的を歪めた。

 自分の役目はただ未来永劫、無意味に世界を見守る事ではなく、主である始祖の神を復活させる事なのだと。

 それこそが眷属たる自分の役割であると。

 ……終わらせたかったのかもしれない。

 自分自身の役目を。

 ただ『見る』事しかできない自分の命を。

 そして番人は、世界の全てから超越してしまった。

 だめなんだ。通用しない。

 あたし達の、こちら側の言葉は……きっともう、通用しない。

―― カシャン

 番人の手から、黄色と赤の混じった何かが放り投げられ、ガレキの散乱する床に落ちた。

 それを見たヴァニスの体が硬直する。

 あ……あれは……

 あれは、血に染まったマティルダちゃんの金の髪飾り!!?