銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「それは、わたしにはあずかり知らぬ事」

 番人が、まるで気にも留めない様子で答えた。

「だが恐らく、その可能性は無いに等しいであろう」

 ジンがギュッと両目を閉じた。

 ジンは始祖の神の力を、死者が復活する魔法のように考えていた。

 知らぬ間に、番人にそう吹き込まれていたのかもしれない。

 だから、モネグロスの為に始祖の神の復活を強く望んでしまった。

 厳しい目で番人を睨むヴァニスは、番人の思惑通りアグアさんを幽閉し、あたしを捕らえ、見事に番人の思惑に加担させられてしまった。

 まさに歯軋りする思いだろう。ふたりの心は今、激しい後悔に苛まれている。

「番人……。世界をほろぼすことに、あなたはなにもかんじないのですか」

 怯えたようなノームの震え声に、ふ、と微かに番人が笑った。

「永い……永い永い、気の遠くなるような歳月をわたしは待った」

 何ひとつとして、迷いの無い声。

「そして今、ようやく主は眠りから覚める。わたしの存在はこの為にある」

 何かを超越してしまったような、遠くの声。

「わたしにはそれだけだ。世界など……しらぬ」

 その満ち足りた表情を見て、あたしは顔を歪ませた。

 あぁ、そうだ。彼はきっともう、超えてしまっているんだ。