銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 アグアさんは激しく『嫉妬』した。

 人間は勝利を確信し、『傲慢』になった。

『惰性』に走り、美食や美酒を『暴食』し、毎夜の宴で男女は戯れに抱きあい、『色欲』に溺れた。

そして、どこまでもどこまでも果てなく『強欲』を募らせた。

 精霊達は、消滅した神の為に、始祖の神の復活を望んでいただろう。

 そして神達自身が、始祖の神復活を望むのは当然だ。

 人間は、自分達の繁栄を脅かす始祖の神を消滅する為に、その復活を望んだ。

 みんな、どんな神なのか深く知りもせずに。

 始祖の……破壊の神復活の条件が、万人の画策通りに全て揃ってしまったんだ。

 ……ふらりと眩暈がして、ふらつきに耐えているあたしの耳に番人の声が聞こえる。

 あたし達など、眼中にも無いように陶酔した声が。

「世界は、始祖の神の手によって破壊される。そして再び創造されるのだ。おぉ、これぞまさしく主の存在意義」

 天に臨み、まるで始祖の神に語りかけるように、番人は歓喜に震えている。

 その姿を声も無く見つめるあたしの胸の中に、様々な感情が溢れ出た。

 怒りとか、虚しさとか、もう、いろんな感情が絡み合って声にすらならない。

「再び創造すると言ったな? それはどんな創造だ?」

 全員の視線がジンに集まった。

 ジンの不思議な美しい質感の肌から、色が失せているように見える。

「破壊で失われた全ての命は、複製して再生されるのか?」