ジンがムスゥッとした声を出す。

「こいつを治癒したからって、お前が礼を言う筋合いじゃないだろう」

「え? いや、だって」

「だって、何だ? お前はこいつの身内か?」

「いや、身内ってそんな、ただ普通に」

「普通って何だ? なにが普通だよ」

「いや、ただ」

「ただ、何だよ?」

「……」

 ……むかぁ。

 なんか、ちょっとムカつくその言い方。

 なにそれ。ケンカ売ってる? 子どもみたいな屁理屈こねちゃって。

「拗ねた中学生みたいな態度、やめてくれない? この非常時に」

「チューガクセイって何だよ。意味は全然分からないけどお前、絶対バカにしてるだろ」

 ジンがこちらにバシッと向き直り、ギリッとキツイ目を向けた。

 なによ、やる気!? 売られたケンカは買うわよあたし!

「そういうお前のケンカ腰の態度こそ、チューガクセイだろ! この非常時に!」

「あたしのどこがケンカ腰なのよ!」

「全部だ全部! やましい事でもあるんじゃないのか!?」

「やましいって何よ! そっちが勝手にヤキモチ焼いてるだけのくせに!」

「ヤキモチなんか誰が焼くか! この非常時に!」

「あたしだってやましい事なんか無いわよ! この非常時に!」

「あのお、すみません。なんだかヴァニス王も、非常時になってるみたいなんですけど……」

 ……ハッ!?

 し、しまった! ケンカに夢中で、ヴァニスの治癒がおろそかになってた!

 ぎゃあぁ!? 意識朦朧状態になっている!