銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「なぜ始祖の神を復活させたいの?」

 他の種族たちが、始祖の神の復活を望む目的は分かる。

 でも、この番人の目的が分からない。

 なぜ復活を望む? 今さらになって。

 そして、なぜ復活の為にこんな仕打ちが必要なの?

「始祖の神が復活する為には、必要な条件があるのだ」

「必要な条件?」

「それがこの世に満たされなければ、復活の為の土台が整わぬ」

「土台……」

「世界を整えるのだ。始祖の神の出現に相応しい世に」

 ごくりと、あたしのノドが鳴った。

 鼓動が速まる。指先が、ひどく冷たい。

「なにによって、この世界を満たすの?」

 あたしの問いに、番人が淡々と答えた。

「傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲」

 番人の唇が、どこまでも無機質に動き、言葉を紡ぎ出していく。

「あのお方に相応しき、これらの全てで世界が満たされた時、ようやく扉が現れるのだ」

 傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲。

 その名は、『大罪』。

 大罪こそが、復活に必要で相応しい神? それではまるで……。

 あたしの額と背中に、ジットリと汗が浮かんだ。

 耳の中に、激しい動悸と呼吸の音が響いている。

 それでも、聞かなければ。

 あたしは、聞かなければならない。

「始祖の神の正体は、なに?」

 番人は、初めて唇の端を上げて……笑った。