銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 あたしは長の、つかみ所の無い無表情な目を見た。

「ねぇ、長」

「わたしは長ではない」

「だってそんな、今さら。じゃあ何て呼べばいいのよ?」

「番人、と」

「番人?」

「それが始祖の神より与えられし、わたしの役目である」

 始祖の神。番人。役目。

 繭に閉じ込められた精霊達。

 堕落させられた人間の心。

 それぞれの事実がグルグルと頭の中を駆け巡る。

 己の正体を隠し、精霊達を従え、ヴァニスを偽り、影からずっと画策してきたあなたの真の目的はなに?

 あるのでしょう? 理由が。

『時は、満ちた。大願成就の時が来たり』

 なんの時が満ちたというの?

「いったい、あなたの目的はなんなの?」

 長の……いや、番人の唇が機械的に動いた。

「始祖の神の復活である」

 ……やっぱり。そんな気がしていた。

 始祖の神。それが全ての鍵なんだ。

 人間も精霊も神も、いまや全ての種族が、始祖の神の復活を望んでいる。

 その目的はそれぞれだけれど、あなたは……

 誘導したんじゃないの?

 世界中が始祖の神の復活を望むように、糸を手繰るように、皆の心を操って仕向けたんじゃないの?