銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 始祖の神。

 また、その言葉が。

 潜む影のように、いつも見え隠れする言葉。

 その始祖の神の眷属だって? 唯一の?

 ……。

 でも始祖の神って、この世界の始まりの神でしょう?

 モネグロスですら記憶に無いほどの遥か昔の、まさに神話の域よ?

 日本でいえば、高天原で神が生まれたって類の。

 いくらなんでも、そんな途方もない……。

「わたしは、始祖の神が、世界で一番最初に生み出した存在である」

「……」

「数多の神々よりも先に、わたしはこの世界に生み出された。以来、最も永くこの世を見続けてきた」

 一番最初に? 神よりも先に?

 本当に、太古より生き続けてきたって言うの?

「そう、わたしは他の精霊達とは一線を画す。故に、精霊の仲間とは言えぬ」

「でも、あなたは長でしょう?」

「わたしは、課せられた役割ゆえに、世界全ての力を持って生まれた」

「課せられた、役割?」

「その力を畏怖した精霊達が、わたしを勝手に長の座に祭り上げた。遥か昔の事だ」

「勝手にって……」

「わたしは、自分で自分を精霊の長だと断言した事は、一度も無い」

 ノームが、泣きそうな顔で長の話を聞いている。

 困惑の極致なんだろう。当然だわ。

 だって、勝手に祭り上げたとか、断言した事は無いとか言われても。

『今さらそんなあんた、何言ってんの?』だ。

 今までさんざん、この長に従ってきた。

 何の疑問も持たずに命令通り生きてきた。

 それを今になって『自分は長じゃない』なんて言われても、冗談じゃないだろう。

 信じていた相手に、信じていた事を引っくり返される。

 その衝撃は半端じゃない。