銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 これがその『考え』なの!?

 服従したふりをして、こんな事を心の中で考えていたの!?

 なんて……なんて酷い事を!

 マティルダちゃんの寂しい心につけ込んで。

 貴族たちや町の人々の心を操り、争わせて。

 人の心を醜く染め上げ堕落させ、衰弱させる。

 しかもその復讐の為に、仲間の命を消耗品のように扱うなんて!

「やる事が汚すぎるわ! あんた、仮にも長と呼ばれる存在なんでしょう!?」

「わたしは、精霊の長ではない」

「……」

 ……はい?
 なんだって?

「わたしは、長などという存在ではない。そもそも、精霊たちの仲間ではない」

「?」

「それに、人間への復讐の為などという理由でもない」

「……?」

「異世界の人間よ、お前は何ひとつ知らない」

 精霊の仲間じゃない? 長でもない?

 人間への復讐でもない?

 言われている事が何ひとつ理解できず、あたしもノームもポカンとする。

 いったい、何を言わんとしているの? あんたは。

 そもそも精霊の仲間じゃないって、どういう意味よ?

 ひょっとして、高齢すぎてボケてきてるんじゃないの?

 もしそうなら大変だわ!

 認知症の老人に車のハンドル握らせて、高速道路を突っ走らせてるようなもんじゃないの!

「ね、ねぇ長。今日が何月何日か言える? 財布とか通帳の置き場所とか、覚えてる?」

「わたしは、神の眷属である」

「そ、そうね。うんうん。精霊はみんな、何かの神の眷属よね」

「わたしの主は、始祖の神である」

 ……。

 え?

 いま、なんて言っ……。

「わたしは、始祖の神唯一の眷属。この世界の番人である」