銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 明瞭な言葉が長の口から次々と発せられるのを、あたしとノームは唖然として聞いていた。

「人間の欲望には底が無い。満足というものを知らない。与えても与えても、次々と欲は深まり続けていく」


 ……そう。
 まるで底なし沼のように、深く、深く。

 自分の要求を叶える為なら何でもする。

 我を忘れて、他者の言いなりにもなる。

 他者より良い目をみようと足掻き、争う。

 そして自ら心を汚染していく。

 宝石と金を手に入れるたびに、人の心は簡単に闇に染まっていった……。


 その言葉を聞いたあたしの脳裏に、城下町の様子が浮かんだ。

 楽で、裕福な生活に味をしめた姿を。

 人間はそれだけで満足できず、どんどん堕落し、他者と比較し、争うようにまでなった。

 これが長の目的だったの?
 その為に、宝石や金銀を人間にバラ撒いたの?

 きっとあのちょびンも、宝石や金を握らされていたんだ。

 そして長の言いなりになって、この現状を隠していた。

 たぶん他の貴族たちもみんなそうだわ。

 我欲の為に結託してヴァニスを執務漬けにし、城に閉じ込めた。

 そして彼の目を逸らし続けていたんだ。

「これは、精霊を奴隷のように扱った人間への復讐!? そうやって人間を破滅させようとしているの!?」

 イフリートが以前に言っていた。

 人間の言いなりになっている長の態度を嘆くジンに、『長には長なりの考えがあるらしい』って。