銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「どうしてそんな事をするんですか!?」
「あなた、精霊を束ねる長でしょう!?」

 あたしとノームが同時に叫ぶ。

 なんで長がこんな事をするのよ!?

 よりにもよって長が、仲間相手にこんな残虐な行為をする理由はなんなの!?

「大量の宝石と、金が必要だからだ」

「だから、なんで!?」

「人間がそれを望んだからだ」

 あたしの脳裏に浮かぶ、豪華絢爛な人間達の生活。

 人間の欲望を満たし、支える為に?

 人間全員が贅を尽くした生活を送るには、確かに大量の貴金属が必要だろうけど。

 ……けど!

「だからって、こんな事までする必要ないでしょう!?」

 いくら長が、人間に対して絶対服従してるからって!

 精霊の存続のために苦渋の選択をしたからって!

 ここまで人間に滅私奉公する必要ないでしょう!?

「あなたは精霊の長なのよ!? こんな犠牲を払ってまで、人間に服従してなんになるのよ!?」

「わたしは、人間に服従した事は一度も無い」

「……!?」

「人間の為に何かを成した事など、生涯において、一度たりとも無い」

 人間の為じゃ、無いって?

「それじゃますます分かんないわよ!」

 じゃあ何でこんな真似したのよ!?

 あんたが仲間の命を奪ってまで、こんな事してる理由が分からない!

 そんな理由がどこにあるっていうの!?

「人間の心を汚染する為である」

 朗々とした声が、枯れ木のような長の体から発せられた。

 初めて会った時の弱々しい姿からは信じられないような、力強い意思が漲っている。