「非道な罪を犯したものは、それに相応しい制裁を受けるべきなのよ!」

 少女らしい柔らかな拳が、あたしの顔をガツガツと殴りつける。

 殴りながら、マティルダちゃんは叫び続けた。

 お父様は死んだ。

 お母様も死んだ。

 上のお兄様も。

 次のお兄様も。

 みんな無慈悲に奪われてしまった。

 だから……

「だからマティルダには、それをする権利があるわ!」

 あたしの全身から一気に力が抜ける。

 ビシャリと頬を殴られて、あたしは崩れるように倒れた。

 床に頭を打ち付けたけれど、痛みは感じなかった。

 ……あぁ、その言葉は……

 あたしの理屈だ。

 婚約者に裏切られ、幸せを無慈悲に奪い取られ、晒し者にされ、笑い者にされて……

 憎んだ。

 命懸けの復讐を誓った。

 それは当然の権利だと思った。

 世界中でこのあたしだけには、正当な権利があると信じた。

 だから、地獄に、引きずり落としてやると……。

 あぁ。

 ……ああぁぁ。

 あたしという、人間は…………!!

 冷たい床に頬を擦りつけ、両手で頭を抱え込む。

 あたしは、声も無くすすり泣いた。