まるきり動く事のできなかったあたしの体が、ノームの声で呪縛が解ける。

 あたしは飛び跳ねるように立ち上がり、近くの繭に駆け寄った。

 そして必死に繭を引き裂き、中の精霊を助け出そうとした。

 手が震える。頭の中は真っ白だ。わけもわからぬまま、がむしゃらに繭に爪を立てる。

 ものすごく硬くて爪が剥げそうになったけど、あたしの手は止まらなかった。思い切り引っ張り、ガシガシと爪を立てる。

「た……」

 苦しげな精霊の泣き声。

「た、すけ……」

 精霊の目から、輝く宝石が次々と溢れ出す。

「待ってて! 今すぐ助けるから!」

「なにするのよ雫さま!」

 ドンッ!と体当たりされて、あたしは勢い良く床に倒れた。

「これはマティルダの宝石よ! 盗っちゃダメ!」

 マティルダちゃんが精霊から溢れる宝石を握り締め、あたしを睨みつける。

「雫さまは、別の精霊から宝石を取ればいいでしょう!?」

 床に倒れ、呆然とその姿を見ていたあたしは、唸り声を上げながらマティルダちゃんに飛び掛った。

 ふたり絡み合うように床に倒れる。

 抵抗する彼女の上に馬乗りになって、あたしは大声で叫んだ。

「どうしてこんな事するのよ!?」

 なんでこんな事するの!? できるの!?

 なんでこんな非道な事ができるのよ!?

 人間は、こんなに残虐な生き物だっていうの!?

「だって精霊の起こす天災のせいで、人間は不幸になったのよ!?」

 マティルダちゃんの叫びに、あたしはビクリと反応した。