「精霊は人間の道具なのでしょう? みんなそう言ってるわ。役に立つ便利な道具だって」

「マ、マティルダちゃ……」

―― ギャアアア!

 目の前の精霊が激しい悲鳴をあげ、苦痛に身悶え始めた途端、目と口から大量の宝石がドッと溢れ出る。

「まあ! 綺麗!」

 マティルダちゃんが両手を差し出し、大喜びで宝石を受け止めた。

 カハ、カハ……と精霊は、断末魔の細い息を吐いた。

 繭がピリピリと破けて、精霊の体がズルズルと繭から抜け落ち、ドサリと床に落下する。

 ひくひくと痙攣しながら、精霊は見る間に色を失っていく。

 鮮やかな色彩の髪と目から、どんどん色が抜け落ち、全身がくすんだ灰色に変色し、やがて、ピクリとも動かなくなった。

 最期に精霊の両目から……

 やっと、本来の透明な雫が一筋、床に流れ落ちた……。

「あぁ、これはもうダメね。でも、いいわ」

「……」

「だって、まだこんなにたくさんあるもの」

 マティルダちゃんが部屋中の繭を見渡して、そう言った。

 あたしの胸元で、ノームが小刻みに震えている。

 息をするのもやっとの様子で、目の前の息絶えた灰色の精霊を見ている。

 あちこちでまた精霊達の絶叫が響き渡り、宝石が吐き出される音がした。

 そして聞こえる、侍女達の高らかな歓声。

「……いやああぁぁぁ―――!!」

 ノームが両手で顔を覆い、泣き叫んだ。