銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「お手間はとらせません。ほんの少々お時間を頂ければいいんです」

「いやいや! 城下の問題は管轄の役人に任せませんとな!」

「だからその役人が機能していな……」

「系統が乱れては行政に逆効果です! 決まりごとは粛々と守らねばなりません!」

 あくまでちょびヒゲは謁見を許可してくれない。

 なんなのよ、このちょびンは!?

 さっきからニヤニヤ笑って、のらりくらりとまるで話しにならない。

 あたしがヴァニスに会うのを邪魔したいんじゃないかと勘ぐってしまう。

「城下の事はこの私が、管轄の者に進言しておきましょう! 雫様が煩う事ではございませんから!」

「でも」

「雫様には、ご自分のお役目の事だけを考えていただかなければ!」

「私の役目?」

「もちろん、執務に疲れた王の御身体と御心を、癒して差し上げる事です!」

 ちょびンは口元に手を当て、わざとらしく小声になった。

「土壇場になってまた呼び鈴を鳴らされては、王がお気の毒ですからなぁ」

 あたしは思わず羞恥に頬を染めた。

 それを見たちょびンが身を反らして大声で笑い出す。

「いやいやいや! これはいらぬ心配というものでしたかな!? うわあっはっは!」

 こ、こんのエロちょびン――!

 あたしはちょびヒゲをギリッと睨みつけてやった。

 どうも態度が胡散臭いわ、このオヤジ。腹に一物あるタヌキオヤジの臭いがプンプンする。

 こんなの相手にしていられない。強行突破してやる。

「だったら、やはりぜひとも王に謁見してお慰めしなければ」

 そう言っておざなりに一礼し、あたしはサッサとエロちょびンの横を通り抜けた。

「あ、いや、雫様!」

 ちょびンは慌てたけど、あたしは無視して先に進む。