銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「無理も無い。最近国王陛は非常にお忙しいですからなあ! さぞお寂しいでしょう!? いや、仲睦まじくて非常に結構です!」

「はぁ、あの、それで……」

「しかしですな! 王たるもの、執務が最優先!」

 おじさんがキリッ!と表情を引き締める。

 そして自分の襟を、ピシッと音を立てて手で正した。

「いかに愛しい御婦人でも、執務を終えるまで会うわけには参りません! それが王たるものの矜持ですからな!」

 ……。

 なんであんたがそこで威張るのよ?

 そもそも誰よあんた。

「でも、とても重要な用件なんです」

「ですから、御婦人との逢瀬は執務を終えてからです」

「いえ、個人的な事情ではありません。国政に関わる事です」

「ワハハ! それはもちろん王と雫様のご関係は、国に関わる慶事ですからなあ!」

 ……だから、別に色恋でヴァニスに会いたいわけじゃないって言ってるのに!

 なにニヤニヤしてんのよあんたは!

 これだからあたし、ヒゲ男はダメなのよ! しかもちょびヒゲだし! もう最悪!

「城下町の規律が乱れているようなんです。いま確認してきました」

「ほう? 城下町が?」

「このままでは、城の方まで乱れが影響すると思います。すぐ王にご報告をしたいんです」

「末端の事で、王の手を煩わせるわけにはまいりませんな。ご多忙な王の執務の量を、これ以上増やして王が過労で倒れられては一大事!」

 ちょびヒゲが、また襟をピシィッ!と正す。

「この国でたった一人の大切な王ですからなあ!」

 だから! なんであんたがそこで威張るのよ!?

 それにピシピシうるさいわよさっきから!