銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「分かった。もう何も言わない。お前の望むとおりにすればいい」

 その言葉は、嬉しい言葉のはずだった。

 なのにまるで突き放されたようで、あたしはどうすればいいのか分からなくなる。

 離されてしまったしまった手首。ジンの声の静かさ。

 悲しい、でもどこか割り切った、諦めのような表情。

「お前の言う通り、オレはお前を決め付けていたよ」

 この、妙に冷えた気持ちの悪い空気。

 イフリートもモネグロスもノームも、息を呑んだようにこちらの様子を気にかけている。

 みんな感じているんだ。

 この不安な、気持ちの悪さを。

「オレは勝手に決め付けていた。お前は……雫だけは特別な人間だと」

「!」

「そう勝手に信じていた。信じていたんだ」

『オレにとってお前だけが特別な人間。失いたくない』

 ジンが、あたしに捧げてくれた言葉。

 あたしにとって、最も意味ある言葉。

 それをあなたは否定するの? あたしはまた、否定されてしまうの?

 勘違いだった。

 間違いだった。

 特別な存在である運命の相手を、間違えてしまっていた。

 あの時の、彼からの残酷な宣告。