銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 やるだけやって、それでダメならまだ納得もできる。

 本当に『あの時はしかたなかった』と自分に言い聞かせもできる。

「だからあたしは城に戻るわ。そして自分にできる事をやってみる。これはあたし自身の為でもあるんだから」

 ジンはあたしの言い分を聞き終えてから、あたしの手を強く握って、何も言わずにどんどん前へ進み始めた。

「ちょ、ジン! 待ってよちょっと!」

「ダメだ」

 こっちの歩幅おかまいなしの勢いに、いまにも転びそうになる。

「待ってったら! 痛いよ離して!」

「ダメだ。許さない」

「ジン! あたし必ず帰ってくるから!」

「そう約束して、お前は今までずっと城に囚われていたんだぞ!」

「……!」

「お前だけじゃない! ノームもアグアも! この城はオレ達の大切なものを飲み込んでしまう!」

 ジンの叫びは悲痛だった。

 真実なだけに何も言い返せない。下を向いて言葉に詰まってしまう。

 沈黙してしまったあたしを見て、ジンは低い声で厳かに宣言した。

「お前を城へは絶対に戻さない! いいな!? そんな事はオレが許さないからな!」

 ピクンと、あたしの眉がわずかに反応した。

『オレが』許さない?

 ……なんで?

 なんであたしの意思決定を、ジンに『許していただく』必要があるの?

 父親に外泊許可を願い出る高校生じゃないのよ?

 人類の滅亡と、あたしの人生がかかった話なのよ?

 なのに、オレが許さないってなによ?