銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 あたしの足が止まって、手を引いていたジンが訝しそうに振り返る。

「どうした雫。急げ」

「あたし、城に戻る」

「はあ!? 何言ってるんだよお前! だから……」

「分かってる! でもこのまま何もしないで自分だけ逃げたら、あたし一生後悔する!」


 死ぬまで後悔し続ける。

 ここで逃げても、罪悪感からは逃げられない。

 何もせずに皆を見捨てて、自分だけが安全な場所へ逃げた罪悪感から。

 途方も無い数の命を見殺しにした現実を、一生背負い続けるんだ。

 そんな人生、地獄だわ。

 人間が滅亡してしまった世界で、とてもまともな神経では生きていけない。

「そんなのあいつらの自業自得だろう!? 人間は犯した罪をあがなうんだ!」

「でもあたしは自分で自分を許せない!」

「これは、しかたのない事だろう!?」

「しかたないからって言い訳は通用しないのよ!」

 みんなが言う。しかたないって。

 そうよ。実際にしかたないって思うわよ。しかたないんだもの。

 でもそれは、人間が自分で滅亡の道を選んだなら、の話よ!

 もう一方の道の存在を知りつつも、滅亡の道をあえて進むのなら!

 でも違うでしょ!? そうじゃないでしょ!?

 あたし達はそれを知りながら、見て見ぬ振りをしようとしてるのよ!

 それを、『しかたない』では済まされない!