銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 …………。

 あの時……

 呪いの言葉を絶叫するあたしの心は真っ暗だった。

 今でもあたしは、あのふたりを許してはいない。

 思い出すたび心はジクジクと痛み、膿のようなドロリとした苦しみが溢れ出す。

 まるで時間が止まったように、苦しみも傷も癒える事は無い。

 あのふたりから受けた仕打ちも、何があろうと消える事は無い。

 頭では分かっている。

 許してやった方が良いんだと。

 許して、祝福してやる方が恨み続けるよりよほど良い。

 それが正しくて美しい行為だと分かってる。

 そして……思い知るんだ。

 とても無理だと。

 頭で分かってたって、許せないものは許せない。

 いくら、『それは良くない事だ』と言われようが無理だ。

 なぜあたしが、あのふたりを幸せにしてやらなければならない?

 あのふたりによって徹底的に苦しめられた、当の本人のあたしが?

 あぁ、あたしは何も分かっていなかった。

 あたしがジンに望んでいた事は、あたしに、あのふたりと親友になれと言ってるようなものだ。

 微笑みながら手を携えて、三人共に生きていけと言ってるようなもの。

 恋人を、婚約者を奪われただけでもこれほどの憎しみだ。

 それに生死が絡むとなればその比ではない。まさに恨みも憎しみも、骨髄に達しているだろう。

 あたしが言っている事は奇麗事でしかなかった。

 確かに美しいけれど、理想的で正しいだけだった。

 正しいだけでは、ただそれだけでは、理想郷ではない現実世界では、とても済まされない……。