銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 おかげであたしは、逆に頭に血がのぼる。

「何を分かってないって言うの!?」

「もう信じないんだよ」

「何をよ!?」

「人間が、神と精霊をだよ。人間にとって神や精霊は、自分を苦しめてきた憎い相手にすぎないんだ」

 そして自分達は勝利者で、オレ達を敗北者だと思っている。

 精霊に至っては、生活のための便利な奴隷だ。

 その道具が、奴隷が、

『このまま精霊達を使役し続けると、とんでもない事になるぞ』

 と告げたところで誰が信じる?

『神を信仰しないと滅びるぞ』

 と、滅びかけている神が言ったところで誰が信じる?

 冷静な頭で聞けば、それが正しい意見だと判断できるだろうさ。

 でも人間達は今、驕り高ぶり、優越感に支配されている。

 だからオレ達が何を言っても、敗者が勝者に向かって放つ負け犬の遠吠え、ぐらいにしか思わない。

 目も頭も心も、曇ってしまっているんだよ。

 欲に。

 欲に目がくらんだ人間が、どれほど浅ましいかオレ達は知っている。

 驕った人間の欲望がどれほど醜く天井知らずか、オレ達は知っている。

 身に染みて、痛いほどに、オレ達は知り尽くしている。

 だから信じない。

 人間はオレ達の言葉を信じない。

 そしてオレ達も人間を信じない。

 もう、二度と信じない。信じられるわけが無い。

 今さら『悔い改めます。ごめんなさい』と言われても、そんな言葉は絶対に信じない。

「絶対に絶対に、人間を許すことはできない」