銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 それが今できる唯一の事なら、できる事をやればいい。

 辛くても、いつか報われるならそれは無駄にはならない。

 そう信じて努力するのが無駄になるはずがない。だから頑張ろう。世界のみんなで。

 だからヴァニスの所へ行きましょう。

 そして精霊を解放し、神への信仰を取り戻させる。

 ヴァニスだって、このままじゃ人間の存亡が危ういと知れば、話を聞いてくれるわよ。

 元々、人間の為に始めた行動なんだもの。

「ねぇジン、そうしましょうよ。あたしの言ってる事、わかるよね?」

「人間は今、勝利の美酒に酔いしれている。それを無かった事にしようと言ったところで、聞くと思うか?」

 やっとの事で手に入れた物が失われる。

 精霊を利用した極楽な生活。人身御供の必要無い日々。

 しかも、次の災害が来た時は?

 妹姫が? それとも大勢の国民が犠牲に?

 それが嫌なら、災害による破壊を黙って全て受け入れるしかない。

「普通に考えて、まずそんな話は誰も聞く耳持たないだろうな」

「でもそれを人間は選ばなければならないのよ」

 それが、自分達が世界で存続していく為の、人間の背負う犠牲。

 一時の安寧と、人間の滅亡とを秤にかけたら、さすがに分かってくれるわ。

 数年後に全滅してもいいから、今だけ楽したいなんて考える人はいない。

 そこまで人間はバカじゃないわよ。

 たまにそんなバカもいるけど。