銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「あ……あぁ……」

 ジンの言葉を聞き終えて、無意識にあたしの口から、吐息のような声が漏れた。

 そして虚しく目を閉じ、天を仰ぐ。

 そう。あたしは知っている。

 今まで生存し続けてきたあたしは、理屈でなく本能で悟っている。

 犠牲無くしてそれに見合う対価など得られない。

 どんなに辛くとも、犠牲という存在を受け入れなければ、生きてはいけない。

 受け入れられねば、死ぬしかない。

 人間が、他者を犠牲にしなければ死ぬしかないように。

 あたしの胸は、この現実という非情さに打ちのめされる。

 ……不可能だ。

 誰も傷つけず、何も犠牲にならず、誰の敵にもならず、大きなものを手に入れる事なんて。

 そんな方法は……無い。

 あたしの理想も希望も、全て絵空事でしかなかった。

 理想はあくまでも理想。

 それが叶ってしまった時、そこは現実では無く桃源郷になる。

 ここは、現実の世界にほかならないのだから。