銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 思わずジンの襟首を両手で掴んで叫んだ。

「やめて! そんな酷い事しないで! なんでそんな恐ろしい事を言うの!? 信じられないわ!」

「信じられないのは人間の方だ!」

 ジンは襟首からあたしの手を引き離した。

「今まで人間が、どれほどの神や眷属達の命を消し去ってきたと思ってるんだ!」

 あたしの両手首を痛いほどに握り締め、あたしの目を見て叫ぶジン。

「自分がやってる事とまったく同じ事を、他者からやられると極悪非道だと罵る! 理解不能だ!」

 あたしは泣きそうな思いでジンの目を見返した。

 分かってるよ。ジンの気持ち、分かってる。

 今まで全ての種族が、ずっと辛い思いをしてきた。だからそれぞれの立場で、なんとか状況を改善しようとしてる。

 でも方向が間違ってる! やり方が違うのよ!

『やられたらやり返せ』じゃ、ヤクザの抗争と同じでしょ?

 それじゃ誰も幸せにはなれない! どうして間違いに気付かないの!?

「間違い? そもそもの間違いは人間側の認識さ。なんだよ、人身御供って」

 暗い怒りに燃える銀の目と、嘲るような声。

「自分達が勝手に神に望んだんだろう? 摂理を曲げてまでも自分達を助けてくれと」

 ジンが人間の事を口にする時、決まって暗い炎が瞳に宿る。

「命の代償が必要なのは承知の上で、自分達が望み続けた。なのに今さら突然被害者か?」