銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「ねぇジン、あたし……」

「なんだ? そんな不安そうな声を出してどうした?」

「あたし、聞いた」

「なにをだよ?」

「その、始祖の神の事を」

「? オレ、前にお前に話していたか?」

「そうじゃない。ヴァニスから聞いたの」

 ジンの目付きが途端に鋭くなった。

「狂王が? なぜそんな話を?」

「彼はあたしを、あの石柱の間に立たせたのよ」

「お前を!? それでどうなった!?」

「どうにもならなかった」

 あの時、石柱は大きな音と共に激しく振動した。

 あたし、もうダメだと思ったわ。死んじゃうと思った。

 でも結局振動は治まって、元通り。それ以上は何の変化も起きなかった。

 ヴァニスは深く考え込んでいたけど。

「彼が何をしたかったのか、何を望んでいたのか分からないわ」

「狂王め、油断ならない奴だ」

「どういう事?」

「おそらく、あいつは始祖の神すらも消滅させようと目論んでいるんだ」

「えぇ!? この世界を作った、母たる始祖の神まで消滅させようって!?」

「始祖の神がいる限り、この世界に神は生み出され続けるだろう。人間にとっては脅威だ」

 それで根源を断とうと?

 ……あれ?

 ていうか、そもそも始祖の神ってもう消滅してるんじゃ?

「消滅してしまったわけじゃない。役目を終えて去っていっただけさ」

「去っていった? どこに?」

「さあな、さすがにそこまではオレも分からない」