銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 銀色の瞳が暗い怒りに燃えている。

 そしてその声は、どこまでも冷徹だった。

 神の消滅を目論んだ人間が、結果的に世界から消滅する。

 そして、そうなる時を虎視眈々と静かに待っている。

 ジンが……

 あたしのジンが、そんな恐ろしい事を考えているなんて。

 でもそんな事になったりしたら!

「モ、モネグロスはどうなるのよ!?」

 人間の信仰心と神の存在は、もう断ち難い関係なんでしょ!?

 人間が滅んでしまったら、モネグロスだって消滅してしまう!

「ジンはそれでもいいの!?」

「良くはないさ」

「だったら!」

「雫は知らないだろう。始祖の神の存在を」

 ……!?

 始祖の神!?

「始祖の神とは、神を生み出すための存在なんだ。だから神が消滅してしまえば再び降臨し、全ての神々を再生するだろう、……最終手段だったが、もうそれしか道はなくなってしまった。残念だよ」

 ジンは今までとはうって変わった優しい目で、モネグロスを見た。

「それまで、しばしの別れだ。人間がいなくなればアグアとも再会できる。モネグロス、どれほど時間がかかるか分からないが、どうか待っていてくれ」

 モネグロスはぼんやりとした目でジンを見て、わずかにコクリと頷いた。

 あたしは、ふたりが手を取り合うのを眺めながら、考えていた。

 始祖の神。

 ここで、その名が出てくるなんて思いもよらなかった。

 あの時、ヴァニスが何かを目論んでいた、あの石柱の場所。

 あたしの胸がまた不穏にざわめき始める。