銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「え?」

「オレ達にとって、もはや人間は敵だ。精霊のより良い環境のために、人間を排除するのは罪悪じゃないよな?」

 あたしの耳に、ジンの声が冷たく響く。

「まさか、人間はやって良くても精霊達はダメ。なんて言い出さないよな?」

「……どうして!?」

 あたしは悲惨な思いで叫んだ。

「どうして、そっちの方向に努力しようとするのよ!?」

「今まで人間がオレ達にしてきた事を、そのまま返すだけさ」

「やられたらやり返すって事!?」

 それじゃまるでハンムラビ法典じゃないの! ここは古代バビロニアじゃないのよ!?

 今そんな事をしたって、何の得にもならないって事が分からない!?

「このままじゃ大変な事に……!」

「分かってるさ。充分にな。それが狙いだ」

「え?……それ、どういう事?」

「ひとつの種族だけに偏った摂理など、成り立つはずがない。必ず、すぐに崩壊する」

「だから、そうなったら大変でしょう!?」

「さて、摂理の崩壊してしまった世界で、オレ達はまだしもあの脆弱な人間達が、どこまで生き延びられるかな?」

「……え?」

「因果応報、人間は滅びる。病巣は取り除かれるんだ」

「……」

「人間が滅び去った平和な世界で、オレ達は静かにゆっくり、世界が再生するのを待てばいい」

「そ、ん、な……」

「真に世界に不必要な存在なのは、自分達だったのだと思い知るのさ。人間は」