銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「言いくるめられて、利用されているんだよ。可哀そうに」

「そ、んな……」

「許さん狂王め! よくも雫にこんな真似を! やはり人間はやる事が悪辣だ!」

 そうじゃない! そうじゃないのよぉ!

 あたしは頭を抱えて地面を強く踏みつける。

 堪らなくもどかしい!

 伝わらない心が、どうしようもなくもどかしくて、今にも爆発しそうだ!

 ねぇジン! あたし達、通じ合ってるんじゃなかったの!?

「雫、やはりここはお前にとって良くない場所だ。すぐに出よう」

「放して!」

 あたしの腕を掴んだジンの手を強く振り払い、感情に任せて叫んだ。

「なんで分かんないのよ! こんな簡単なことが!」

 大事なのは垣根を越える事なのに!

 自分達の狭い了見に、まるで世界のたったひとつの真実のようにしがみ付いてたって、問題は解決しないのよ!

 その了見を捨てさえすれば解決するのに! 大きな物が手に入るのに!

「なのに、どうしてなの!?」

「お前の言ってる事は不可能なんだよ」

「ほら、みんな同じ事ばかり言ってる!」

 不可能なんかじゃないわ!

 誰ひとりとして、やろうとしないだけの話でしょ!?

 不可能って楽な言葉に責任を押し付けてるだけよ!

「全部相手が悪いんだ、自分はちっとも悪くないって、被害者ヅラしてる方が楽なだけよ!」

「事実、オレ達は被害を受けているだろ!?」

「そこが間違っているって言ってるのよ!」

「間違っていない!」

「間違ってる! なによ! 人身御供でずっと人間の命を奪い続けてきたくせに!」

「……!!」