銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 肩をもつとかもたないとか。

 どっちの側だとか、こっちの側だとか。

 あぁもう、みんな口を開けばそんな事ばかり。

 だから、そういう考えが一番邪魔なんだってば! 事態の解決の前に立ちはだかる唯一の壁なの!

 なんでそんな簡単な事が見えないかな!? みんな揃いも揃って!

「事態は一刻の猶予も無いのよ!?」

「分かってるさ。だから神殿に戻るんだよ」

「だから、戻っちゃダメなんだってば!」

「戻らずにどうしろって言うんだよ!」

「人間と話し合って誤解を解いて、理解し合って協力しろって言ってるの!」

「はあぁ!?」

 ジンは見た事も無いような表情で絶句した。

 その、いかにも受け入れなさそうな態度に、あたしのイラつきはますます大きくなる。

「おい雫、気は確かか?」

「あたしは、これまでの人生最大に正気で本気で真剣よ!」

 プロポーズ受けた時とはもう、比較にならないぐらい真剣だわ!

 ヴァニスには理解してもらえなかったけれど、あなたは分かってくれるわよね!? あたしの気持ちを!

 だってあたし達の心は通じ合っているんだもの!

「お願い分かって!」

「……分かった」

「ほんと!?」

「あぁ、お前は狂王に操られているんだ」

「……!」

 あたしは愕然とした。