銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 イフリート達が、無言でこちらの成り行きを見守っている。

 何も言わないけれど、みんなジンの言葉に同意しているのは、表情を見れば明らかだ。

 この誤解を解かないことには、話どころじゃないわ。

「違うの。それは誤解なのよ」

「誤解?」

「えぇ、間違ってるのよ。あなた達の認識が」

 別にヴァニスは、人間は、血も涙も無い極悪非道の生物ってわけじゃないの。

 人間には人間の、どうにもやむを得ない事情と、立場ってものがあったのよ。

 それを知ってもらえれば、垣根は越えられるはずだわ。

 ジンはあたしの言葉を聞いて、眉間にシワを寄せた。

「オレの認識のどこが間違っているんだ? 全部事実だろうが。狂王は神を信奉する同胞を処刑していないのか?」

「い、いや、それは確かに処刑したけれど」

「人間達は、精霊を支配していないのか?」

「それは支配してる、けど」

「それらは全部、狂王や人間達が我欲を叶える為の、オレ達への一方的な行為じゃないのか?」

「それは……それは、人間達の希望を叶える為の、一方的な行為なんだけど……」

「やっぱり全部事実だろうが」

「そうだけど! あたし知ったのよ!」

「何をだよ?」

「事実と真実は必ずしも同じじゃないって!」

 あたしはジンに向かって力説した。

 そうよ、あたしはその大切な事を知った。

 異種族、それぞれの立場、という名の色眼鏡を外しさえすれば真実が見える。相手の事情も理解できる。

 理解し合えれば、歩み寄れる。歩み寄れば協力し合えるわ。

 そうすれば、全ての種族が共存していけるのよ!