銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 今ここで城を離れるわけにはいかないわ。今だからこそチャンスなのよ!

 人間も精霊も神も揃ってる。本来なら敵対し合って、近づくことすら出来ないはずの三者が。

 これは千載一遇の機会だわ。
 今この時を逃したら、こんな機会は二度と訪れない!

「言ったろ? 時間が無いんだよ」

 あたしの手をとり、強引に引っ張って歩き出そうとするジン。

 だから、さっきから待て待て言ってるのに!

 人の話を聞かない国民性だと思ってたけど、精霊までそうなわけ!?

 ここって世界規模で、話を聞かないウィルスでも蔓延してるのか!?

「待ってって言ってるでしょ!」

「いったい何なんだよさっきから! お前、城から出たくないのか!?」

「そうじゃなくて! 話を聞いて欲しいのよ!」

「だから、話なら歩きながら聞くって!」

「あたしの話じゃない! ヴァニスの話を聞いて欲しいの!」

 ジンの顔が「はぁ?」っと歪んで、イフリート達と顔を見合わせる。

「ヴァニスって、狂王の事か?」

「そうよ」

「あいつが、オレ達に何を話したがっているっていうんだ?」

「いや、別にヴァニス自身は、話したがっているわけじゃないんだけど……」

「そうだろうな。オレ達だって、人間と話しなんぞしたくもないさ」

「そういう事じゃないのよ」

「謝罪して許しでも請うつもりなのか? ……ふん、今さらどのツラ下げて、だな。同胞を殺戮し、他種を支配した罪深さは、どうあっても許される事など無い」