銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 あたしはその涙を見て決心した。

 今すぐ、この場で皆に話そう! あたしの考えを、提案を!

 もう一刻の猶予も無いわ。早く世界の状況を変えなければ、モネグロスにはもう時間が無い。

「ねぇジン、聞いて欲しい事が……」

「雫、今すぐ城を出るぞ!」

「……え?」

 あたしは思わず言葉を引っ込めた。
 城を出る?

「みんなで戻るんだよ。砂漠の神殿に」

「戻る?」

「見ての通りモネグロスはもう限界が近い。もうすぐ確実に消滅する。だからお前を迎えに来たんだ。精霊の長に見つかる危険を冒して」

 呆気にとられているあたしに、ジンは焦った様子で捲し立てた。

「もう見つかっているかもしれない。急ごう。イフリートとノームは、実体化を解いて一足先にモネグロスと戻るんだ」

「うむ。承知」

「オレは雫と一緒に戻る。時間がかかるが仕方ない。それまでノーム、お前の力で何とかモネグロスを守ってくれ」

「は、はい。びりょくながらがんばります」

「よし。じゃあ行け。頼んだぞ」

「ちょ……ちょっと待って!」

 モネグロスを抱え上げようとしたイフリートの腕を、あたしは大慌てで掴んだ。

「どうした?」

「聞いて欲しい事があるの!」

「歩きながら聞く」

「待ってよ! ここで聞いて欲しいの!」