あぁ、なんて酷い顔色。
 色が悪いを通り越して、もはや生気が感じられない。

 影が、存在感そのものが、こんなに薄っぺらになってしまうなんて。

 今すぐフゥッと掻き消えてしまっても、何の不思議も無いわ。

 神の消滅を本当に現実的に感じて、あたしは言葉を失った。

「雫、アグアの無事は確認できたのでしょうか……?」

「ご、ごめんなさい。探し始めた途端に見つかってしまったの」

「そう……ですか……」

 力無くそう言った後、モネグロスはズルズルと崩れるように倒れこんでしまう。

 あたし達は慌ててモネグロスを支えた。

「モネグロスしっかりしろ!」

「本当にごめんなさい! 見つける事ができなくて!」

「よいのです。私ですら、アグアの気配を感じ取る事ができません……」

 モネグロスは悲しげな目で城を見上げた。

 それぞれの窓から漏れる明かりを、ひとつひとつ確認するかのように。

 そのどれかに、アグアさんの姿を懸命に探して。

「愛しい君……私は、ここに……」

 モネグロスは城に向かって……いや、囚われた愛しい相手に向かって、手を伸ばした。

 届かぬことを知りながら、それでも伸ばさずにはいられない。

 ……やっと会いに来た。

 救いに来た。

 自分の命も顧みずに。

 そして、こんなに近くにいる。そばにいるのが分かっているのに。

 でも……会えない。

 それがどんなに辛いことか。

 今にも我が身が消滅しかけている状況で、どれほどの思いで城を見ているんだろう。

 モネグロスの顔が悲痛に歪み、両目に涙が溢れた。

 その涙が呻き声のような泣き声と共に、ハラハラと零れ落ちる。