水の精霊が消え去る瞬間、『仲間を、世界を救って欲しい』って言っていた。

 いったい、この世界はどんな問題を抱えているんだろう。

 森の人間の国の狂王。衰えてしまった神と精霊達。

 砂漠の神に会うことが、それらに対する重要な要因なんだろうか?

「まずは神殿へ行くんだ。事情はその時に分かる。お前の身の振り方も、神に相談すればいい」
「……分かったわ」

 あたしは情けなさ一杯の心境で、仕方なく頷いた。
 だって、あんまりじゃない? この現状。

 異世界トリップなんて非常事態に見舞われたうえに、飛ばされた世界にまで、なんだか非常事態宣言が発令されてるみたいだし。

 悪いけどあたし、自分の事で手一杯なのよ。

 他人の深刻な事情なんてかまってるヒマないの。巻き込まれても迷惑でしかないわ。

 一刻も早く無事に戻りたい。元の世界に。

 そのために、一応言う通りにしよう。
 神殿に行くのが最善なら、もうそれでいいわ。事情も何も、どうでもいい。

「分かったわ。すぐ行きましょう神殿に」
「よし、じゃあ今すぐ実体化を解け」
「……」

 はい?

「だから、実体化を解くんだよ。生身の人間の体じゃ飛べないだろう?」

「……」

「おい? まさか人間ってのは、生身の体で飛べるのか?」

「いや、生まれてこのかた一度も、生身で飛んだ経験はないけど」

「あぁ驚いた。そうだろう? じゃあ早く実体化を解け」

「あのぉ……」

「なんだよ? 早くしろよ」

「生まれてこのかた一度も、実体化ってのを解いた経験もないんだけど」

「……」